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日本スポーツ精神医学会設立趣意書


 1970年代には運動が身体疾患の治療や予防に有効であるという科学的根拠が報告されるようになり、1980年代には運動の精神面への効果の検証がアメリカを中心に発表されるようになりました。

 現代のスポーツ医学はスポーツ選手に対する種々の医学的アプローチのみならず、さまざまな疾患の予防、治療やリハビリテーション、一般人の健康の維持・増進に大きな役割を果たしています。しかし、スポーツ医学がこれらの役割を真に果たすにはこころの問題を避けては通れないと考えます。ここにスポーツと精神医学との関係を研究する学問領域としての「スポーツ精神医学」が必要になります。

 1987年、Massiminoは「スポーツ精神医学」の基本的役割はスポーツ選手の精神医学的問題の予防と診断と治療であると記述しました。
 1992年、Begelは「スポーツ精神医学」をこころと身体運動の関係を研究する科学であると定義しました。
 1992年に国際学会(International Society for Sport Psychiatry:ISSP)が誕生し、1999年に「スポーツ精神医学」の初めての教本が出版されました。いずれにしても、「スポーツ精神医学」はまだ揺籃期の学問といえます。一方、わが国では精神医学のスポーツとの取り組みは極めて少なく、「スポーツ精神医学」はまだ誕生していないのが現状です。

 そこで、スポーツと精神医学との関係を究めるために、わが国にも「スポーツ精神医学会」を設立し、健康な社会の建設に貢献したいと考えます。
研究の方向としては、①スポーツの精神医学への応用、②精神医学のスポーツへの応用を2本の柱として、③身体運動と脳機能の基礎的な研究を組み入れ、これら三つに有機的な相互の関係を持たせながらスポーツと精神医学の関係を包括的に捉える医学分野にしようと考えています。

 すでに、スポーツ界には精神科医が関与すべき問題が山積しています。例えば、トップアスリートが精神的問題をかかえ競技に影響を及ぼす問題、また平成14年度から精神障害者が全国障害者スポーツ大会にも出場するようになり競技性スポーツを導入する際に生じる精神医学的注意点など、精神医学がすぐにでも検討しなければならない状況が目の前にあります。

 早急に、「日本スポーツ精神医学会」を設立し、スポーツと精神医学に関する研究を開始しなければならないと考えます。

                  2002年11月 「日本スポーツ精神医学会」設立発起人会

 

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